落合孝広(おちやたかひろ)さん研究する「エクソソームとは?」「マイクロRNAとは?」
NHKEテレ1東京 サイエンスZERO「生命維持の要 エクソソーム」
2018年7月22日(日) 23時30分から放送されます。
人の生命活動は、脳の指令のよるという常識が覆り、今では、各々(おのおの)の臓器の細胞がお互いにメッセージ物質を出してやりとりし、生命を維持しているということがわかってきている。
世界が注目する、がん細胞が出す「エクソソーム」とは?
がん細胞が出す「マイクロRNA」。
ある特別な「カプセル」に封じ込められた形でがん細胞から放出され、血液に乗って全身をめぐっていると考えられています。
その「カプセル」とは、「エクソソーム」と呼ばれるものです。
エクソソームは、直径わずか1万分の1ミリほどの、
まさに小さなカプセル(小胞)で、がん細胞だけでなく、
ほとんどすべての細胞が分泌していることが分かっています。
かつては、細胞が不要になった物質をこのエクソソームに封入し、外に排出していると考えられてきました。
しかしエクソソームの中に「マイクロRNA」が含まれていることを
スウェーデンの研究者が発見しました。
さらにその後、落谷孝広さんの国立ガンセンター研究チームが、
なんと細胞同士がこのエクソソームの中のマイクロRNAを使ってお互いに
「情報交換」をしているという驚くべき事実を突き止め、世界に衝撃を与えました。
これまでさまざまな細胞が、
「ホルモン」や「サイトカイン」などと呼ばれるミクロの物質を出して、
情報交換を行っていることは知られていました。
その「細胞間コミュニケーション」の新たな道具として、
「エクソソーム」の存在が明らかにされたのです。
エクソソームによるがん悪性化機構の解明
国立がんセンター研究所では、エクソソームを介したがんの増殖、浸潤、転移などのがん悪性化メカニズムを研究しています。
がん微小環境の形成や前転移ニッチェの形成メカニズム解明に向けて研究を行っています。
例えば、がん細胞が分泌するエクソソームに内包されるmiRNAが腫瘍内血管新生を引き起こしす。
その結果、エクソソームおよびエクソソーム内miRNAが転移にも関与していることを明らかにしました。
さらに、がん細胞が分泌するエクソソームは脳血液関門を破壊し、脳転移を促進する一因であることがわかっています。
がん細胞のみならず、非がん細胞である骨髄由来間葉系幹細胞が分泌するエクソソームが、がん細胞の休眠状態を誘導し、長期再発に関与していることが明らかになりました。
現在、エクソソームが引き起こす卵巣がんの腹膜転移に関する研究やがん微小環境におけるエクソソームの機能解明などの研究がおこなわれています。
エクソソームを標的とした新規がん治療法の開発
エクソソームの機能解析から得られた知見をがん治療へ応用することも試みています。
がん細胞のエクソソーム分泌を阻害することで、がん微小環境や前転移巣の形成に必要な情報を遮断し、
転移を抑制することを試みており、さらに、
血中に分泌されたがん細胞由来のエクソソームを除去する治療法の開発も行っています。
エクソソームを利用したリキッドバイオプシーの開発
血中をはじめとする体液中にエクソソームは存在していますが、
これらエクソソームは様々な細胞が分泌した「カクテル」です。
その中から、がん細胞が分泌したエクソソームを捉えることで、がん診断が可能であると考えています。
血液や尿の採取は低侵襲的に行えるため、苦痛の少ない診断法となります。
エクソソームにはタンパク質やmiRNAが含まれており、
それぞれがん細胞特異的な分子が存在していますので、
何を「目印」にして、どのような方法で検出するか、が研究の重要なポイントになります。
ハイスループット性の高い、エクソソーム検出系を開発されています。
この方法を用いて、大腸がん患者さんの血清に多く含まれるエクソソームの検出に成功しています。
現在、血中に存在する膵臓がん細胞由来のエクソソームや、
尿中の膀胱がん細胞由来のエクソソームを標的とした診断法の開発をおこなわれています。
また、血中に存在するmiRNAを標的とした新規バイオマーカーの探索もおこなわれています。
エクソソームをもっと詳しく解説しています。
よかったら読んでみてください!
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miRNAによるがん悪性化機構の解明と治療応用
遺伝子発現のファインチューナーであるmiRNAの発現異常は、
がんを含む多くの疾患で認められています。
これらmiRNAの働きを理解し、発現異常を正常に戻すことで治療を行うことや、
miRNAの制御下にある遺伝子について機能解析を行い、
新たな治療法の開発を手がけています。
最近では、肺がんや骨肉腫の薬剤耐性に関与するmiRNAや肝がんの
浸潤を抑制するmiRNAを発見し、報告しています。
また、悪性骨・軟部腫瘍を標的とし、病理組織学所見に基づいた
miRNAの発現および機能解析を行いました。
その結果、悪性化形質に関与するmiRNAを同定し、現在、臨床応用に向けて研究がすすめられています。
落合孝広さんのプロフィール
提供元:https://ls.beckmancoulter.co.jp/
氏名:落合孝広(おちや たかひろ)
1957年:神奈川県生まれ。現在60歳
1988年(昭和63年)3月:大阪大学 大学院 医学研究科博士課程修了 医学博士
1988年(昭和63年)7月:大阪大学細胞工学センター 助手
1991年(平成3年)4月:アメリカ CA 州ラホヤ癌研究所(現バーナム医学研究所)
1992年(平成4月)11月: 国立がんセンター研究所 分子腫瘍学部 主任研究員
1993年(平成5年)5月: 国立がんセンター研究所 分子腫瘍学部 室長
1998年(平成10年)6月:国立がんセンター研究所 がん転移研究室 独立室長
2004年(平成16年): 早稲田大学生命理工学部 客員教授
2008年(平成20年): 東京工業大学生命理工学部 連携大学院大学 客員教授
2010年(平成22年)11月:国立がん研究センター研究所
分子細胞治療研究分野 分野長
2012年(平成24年):星薬科大学 客員教授
:昭和大学歯学部 客員教授 兼任
2018年3月:国立がん研究センター研究所・・・定年退官
2018年4月2日~:東京医科大学医学総合研究所の教授に就任
現在実施中の日本医療研究開発機構(AMED)の
「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」の
プロジェクトリーダーは引き続き務める。
受賞歴
1988年(昭和63年):井上財団研究奨励賞
1995年(平成7年):国立がんセンター 田宮賞
2000年(平成12年):日経 BP 技術賞 バイオ医学部門賞
2003年、2004年:再生医療学会賞
2006年日本人工臓器学会 オリジナル賞
2007年:IFAT 国際学会優秀演題賞
2010年:日本薬物動態学会ベストポスター賞
2012年:MNC 2012 Award (Outstanding Paper)
落谷孝弘さんの著書を紹介
医療を変えるエクソソーム: 生体機能から疾患メカニズム,臨床応用まで | ||||
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